株式会社国際介護予防センター

× 閉じる

認知症ゼロを目指して国際介護予防センター会長 梶原 拓

 2009年10月、市民本位の健康医療を実現するため「健康医療市民会議」を立ち上げました。その第1回の会合で講演してもらったのが、小川眞誠・NPO法人日本心身機能活性療法指導士会理事長です。中国上海で重症の認知症患者が運動療法で次々と改善していく様子をビデオで説明を聞き、特に自閉症で自立も困難な男の子が正常に回復し小学校で優秀な成績を挙げるようになった事例は感動的で、市民会議メンバーが揃って小川氏の活動を応援しようということになり、今日に至りました。国際介護予防センターも、その一環です。

 心身機能活性運動療法の中の「フラハンド」や「フィンガースポーツ」は、スポーツ医学理論に基づき開発され、小川氏が日本で商品化し、プログラム化したものです。運動が脳を活性化することは明らかで、同じく米国ハーバード大学医学部臨床精神医学准教授ジョン・J・レイティ医学博士は著書「脳を鍛えるには運動しかない 最新科学でわかった脳細胞の増やし方」(NHK出版)の中で「運動すると35%も脳の神経成長因子が増える」「ストレスやうつを抑えられる」「癌にかかりにくい」「運動を週2回以上続ければ認知症になる確率が半分になる」などと説いておられる。日本でも国立長寿医療研究センター(愛知県)が認知症予防のための運動プログラムを開発されています。また、九州で国際Oリング学会・副会長の下津浦康祐医師が心身機能活性運動療法でアルツハイマー型認知症の高齢者を改善した事例の臨床で、脳内のアミロイドβ(認知症の原因物質)が減少することを証明されています。

 数年前、NHKテレビで、動物園のチーターがアルツハイマー病になったと報道されました。猛スピードで獲物を追う習性の動物が檻に閉じ込められた結果です。人間も動くのが本性で、「静物」でなく「動物」なのです。大脳は直立歩行で著しく進化しましたが、人間の遺伝子はチンパンジーと5%程度しか違わないと聞きます。大脳の運動野(体制感覚野)も1/3は口、1/4は手の指の運動に関係して、両者で半分以上となります。食事はよく噛む、よく喋る人やよく料理や手芸をする人は認知症になりにくいと言われます。昔からクルミの実を掌で転がして認知症防止をする知恵がありました。一方、介護施設に行くと認知症患者が囲碁や将棋を打っている光景が見られます。一時流行した算数の計算などは認知症予防トレーニングとして効果的でないことが判りました。やはり体の運動で脳の血流を活性化することが脳の機能障害には有効なのです。

 小川氏の心身活性療法も運動療法が中心で、中国上海、台湾、香港、シンガポール、韓国などアジアで普及していますが、最近、中国では北京、ヨーロッパではオランダで心身活性療法を導入することになりました。香港ではノーベル賞を受賞した科学者の認知症が治癒したりして大きな成果を挙げ評価が益々高まっています。上海での成功事例は昨年、国際放送NHKワールドで世界に報道されました。

 日本では、各地に心身活性療法を実践する施設ができてきましたが、制度上の制約があり普及が遅れています。現行の制度では「なるべく重症の患者を長く介護する」と病院も施設も経営上有利で、友人・知人の病院長や施設長に心身活性療法の活用を勧めても「運動療法に手間がかかる、改善すると国からカネが減る、二重のマイナスだから、いい方法とわかっているが経営上取り入れることはできない」といわれます。

 このような状況ですから、日本では認知症患者は激増し、本人が不幸になるだけでなく、家族の負担は計り知れない。もちろん自治体や国の財政負担は重くなるばかり。なぜか専門家は薬剤依存意識が強く、特効薬の開発に熱中しています。運動療法では平凡過ぎて面白くない、営業的にも魅力がないということでしょうか。その間に薬剤を使い過ぎて精神科に送り込まれている不幸な患者も増えています。

 情報社会が進展して頭脳労働が中心となり、企業では従業員の「うつ病」が増え、また、運動不足で家族の認知症が増え、従業員は介護の負担で疲れ、企業の生産性が阻害されています。日本の産業・経済の面からも大きな社会問題となっています。

 認知症になると体のバランスがとりにくくなります。数年前、健康関係の会合で㈱タニタの谷田会長と同席した際、簡単に体のバランス状況を計る器具を開発できないかと相談したところ、直ちに快諾していただき、当センターと共同開発で「足の裏博士」として世界的に有名な平澤彌一郎博士の理論を根拠として、「心身バランス計」が完成、市販できるようになりました。専門の大学教授と協議して「心身バランス年齢基準」」(暫定)も作成しました。体重計に乗るような簡便さで認知症、うつ病、自閉症など精神的不安定の兆候を目で確認できるようになりました。心身活性療法でトレーニングして改善効果を自分の目で確かめることができます。実際に応用して患者や家族の方々にも「よく判る」と喜ばれています。

 心身活性療法には「回想療法」もあるように、人間は心身にわたる多面的・複合的な統合体です。別途、頭、体、心の「三位一体健康法」を開発しています。その普及も併せて進めて行けば、相乗的により大きな成果が挙がるものと期待しています。

 心身機能活性運動療法では、認知症も「うつ病」も予防だけでなく、患者にも心身活性療法の指導士になる認定講習の受講を勧めています。回復後は指導士として活躍しておられるケースもあります。「認知症ゼロ」の目標は夢で終わりません。

▲上部へ戻る